てんどん丸の随想録

日常で感じたことをぽちぽち書いていきます。

就活の時「志望動機は”家から近いからです”って書くんだ!!」と大真面目に言われた話

期待した答えは、得られないことがある。

専門家に相談したら、自分が抱えている問題が解決する!と一般的には考えがちではあるが、そういうことばかりではない。少なくとも自分は、相談→解決というハッピーシナリオを辿ったことはない。今回はそんなお話。

「志望動機は”家から近いからです”って書くんだ!!」

自分は大学を卒業してから就職活動を行った。その際、職業紹介事業を行っている機関を利用したこともあった。

当時は就職氷河期だったらしい(後から知った)。

自分は「兎にも角にも、何でもいいから就職しなければ!!」というタイプではなかった。「何にも考えないで就職したら、あとで困りそうだナー」と考えるタイプであった。

しかし、それなりに焦りというものもあったので、職業紹介事業の事務所へ行ってみることにした。

受付を済まし、相談員さんとの面談が始まった。相談員さんを仮にTさんとする。Tさんは自分が卒業した大学の就職支援課とも緊密に連携をして、大学生および既卒の人の就職支援を行っていると自己紹介をした。

そこから、履歴書と志望動機の書き方のレクチャーが始まった。

第一声に、自分は耳を疑った。

 

Tさん「志望動機は”家から近いからです”って書くんだ!!」

自分「…?」

Tさん「家から近いというのは、志望動機として重要だ!!」

自分「・・・?!?!??(; ・`д・´)」

 

なんだこりゃ、本気で言ってんのかと思ってTさんの顔をまじまじと見ると、彼は本気で言っていた。はあ。

Tさんいわく「家から近いと通いやすいって思ってもらいやすい」という理論らしい。残念ながら、それはTさんの理論であって、求人している企業の理論ではない。

 

求人している企業が求める志望動機は、あなたはどんな人間で、その人間性をその企業でどのように発揮するか、を聞きたいと予想される。予想されると書いたのは、正直、会社なんて入社しないと具体的にどのようなことをするのかなんてさっぱりわからないのだから「御社の○○業務に役に立ちます!」と言ったところで、学生の想像である。実際はわからない。よって、想像上の役に立つというセリフなんて聞きたくないという企業もいるかもしれないからだ。

企業の採用担当官も「入社しないと会社がどのようなものか正確にはわからない」というのを理解しているため、志望動機を聞かないという企業もあると聞く。

よって、志望動機に絡めて伝えることとして、最もお互いに役に立つであろう情報は「自分はどんな人間か」が最適なのではないか。

・・・というのを当時23歳の自分ですら理解していたのだが、50代後半に見えるTさんは理解していないようであった。

「家から近い」なんて、企業側が聞きたいと思ってんのかね。

こんなレクチャーを求職者全員にしてんのかい。おおこわ。

 

この事務所には、それ以後行くのをやめた。

 

行くのをやめて1か月、職業紹介事業の事務所から電話があった。自分がまったく顔を見せなくなったのでどうしたのか尋ねられた。自分は「いい求人が無いのだ」と答えると「そんなこと言ってるから就職できないんだ!!」と怒られた。正直、ロクなアドバイスもできない所に行っても時間の無駄である、というか、この事務所のアドバイスをまともに受けても採用される気がしないから行かないんだけどね、と心の中で思いつつ、その後もその事務所には行かなかった(当然である)。

 

さらに2か月後、職業紹介事業の事務所から電話があった。Tさんが電話をかけてきて「最近、事務所へ相談に来ないからどうしたのかと思い電話した」と言われた。その時には、自分は内定を頂いていたので「就職先は決まった、1か月後には入社する」と回答した。

その時のTさんの電話の向こうの反応が

Tさん「えっ・・・・・・・・・(しばらく沈黙)」

であった。「就職決まったのか?コイツが?」という空気感を出していた。

どうやらその事務所では自分は就職する気が無い&事務所に通いもしない問題児として認識されていたようである。

 

専門家ではあるが、自分の案件には役に立たない。あるいは、専門家に見えるが、ただ単にその組織に所属しているだけ。

Tさんは酷い例であるが、専門家であっても自分の案件に役に立たない時がある。

1)専門家ではあるが、自分の案件には役に立たない。

(料理人で例えると、自分は中華料理について聞きたいが、相談に乗ってくれた専門家が和食料理人だったとき)→中華の料理人をさがすことで解決。

2)専門家の組織に所属しているが、ただ単にその組織に所属していて、機能はしていない。

(またまた料理人で例えると、店の料理人として所属しているが、実際には料理をしてない料理人。)→料理をしている人を探すことで解決。

 

Tさんには志望理由のレクチャーしか受けていないので1)、2)のどちらのタイプなのかはわからない。その他の分野では素晴らしいアドバイスをくれる人かもしれない。(しかし、Tさんのアドバイスは許されるものではないだろう。)

 

専門家は必ずしも答えをくれる存在ではないので、自分で考えるしかない。専門家を自ら選び、必要であれば見切ることも必要。

就職の分野に限らず、専門家とは必ずしも自分が求める問題の答えを持っているとは限らない。先程、料理を例に挙げたが、料理という枠で考えても、和食、中華、フレンチ、イタリアン…と色々な分野に枝分かれしている。自分の問題はその枝分かれした分野のどこに所属するのか見極め、相談したい専門家は自分の問題の分野を扱っているのかしっかり調べておく必要がある。

また、自分がどのような問題を解決しようとしているかによるが、それがニッチな分野であればあるほど専門家に聞いても答えが得られないことがある。その場合は、自らで考えるしかない。判断材料を自分で集め、それらから解決方法を導き出すしか方法はないのだ。

そして、相談した相手があまりに酷い場合は見切ることも必要である。

専門家ということで鵜呑みにせず、自分の頭で考えることが、自分が求める答えへ近づける良い方法のひとつなのかもしれない。