てんどん丸の随想録

日常で感じたことをぽちぽち書いていきます。

採用面接で「大学の名前がいいから会ってやったんだ!」と言われた話

本来、採用面接の際は企業側と求職者側は対等である。

企業側は「こういった人材を求めている」と表明し、求職者側は「私はこういう仕事で役に立つことができます」と表明し、お互いが良いと判断すれば雇用契約に至る…というものである。また、条件や能力が合わないと判断すれば、企業側または求職者が断ることもできるのだ。

お互い対等で、雇う側も雇われる側も受け入れたり断ったりする自由があるのだ。

A社の勘違い面接官の話

自分は大学4年生の時長い期間ひどく体調を崩した。とても就職活動と学業を両立して進めていく体力がなく、いろいろ考えた末に、やむなく学業を優先し大学の単位を取ることに専念した。無事に大学を卒業し、大学卒業後に就職活動を行った。大学を卒業してから就職することに対しては、自分自身納得していたし、「体調が万全な時の方がうまくいくだろう」と思った。実際、卒業してから9か月ほどで就職できた。

 

友人たちは「大学卒業までに就職できないなんて、コイツ、終わったな…」という憐みの目を自分に向けていたが。

 

就職先が決まるまでいろいろな企業を受けたのだが、その中にA社という会社がある。そこそこの大企業であり、求人が出ていたので深くは考えずに採用面接を受けてみようと思ったのだった。

A社に履歴書を送り、書類選考を通過したのでA社へ行き、そこで採用面接を実施した。面接官は2名であった。

一方の面接官から、よくある一通りの質問(志望理由など)を受け、最後に自分がなぜ大学を卒業してから就職活動をしているのかと質問されたため「大学4年生の際は学業を優先したのだ」と答えた。

すると、それまで黙っていたもう一人の50代とみられる面接官が言い放った。

「そんな綺麗ごと信じられるか!」

自分は目が丸くなった。目が丸くなるとはこういうことなのだとその時思った。

その50代面接官は堰を切ったように罵り始めた。

「大学の名前がいいから会ってやったんだ!」

「お前は大学在学中に就職するという、皆が進むレーンからひとり外れたんだ!」

「そんなの”自分が馬鹿でした”と言わなければ世の中の人は信じないぞ!」

「これは親切心からアドバイスしてやっているんだ!」

そして、50代面接官の息子は嫌々ながらも大学在学中に就職したぞ、という話をし出した。なんじゃそりゃ。

「大学なんて入学したって何の役にも立たん!」

「だから大学は就職訓練場にすべきなんだ!!」

「世の中は厳しいんだ!!」

そして終いには

「お前みたいな人間、扱いにくくて入社されたら困る!!!」

と言っていた。

ダメだこりゃ(´・ω・`)

その時の50代面接官の態度は、尊大という言葉がぴったりであった。

 

この面接は当然ながら落ちた。が、仮に通っていたとしても辞退しただろう。

当たり前だ。この面接官たちは勘違いしている。「自分たちは”雇ってやる側”だ」「給料を払ってやるのだ」「社員は言うことを聞くだけの駒。自分で考える力なんて必要ない」という考えが言葉から伝わってきた。

とりわけ、物事の本質を考えず一般論で言われている内容を信じ込んで「自分たちの言うことが世の中の真理だ」という態度で他人に言い放つのは、思い上がりも甚だしい。

大学で学問を修めることも冒涜している。(そんなことを言うのであれば、募集要項に「大卒以上」なんて書かなければいいのに…)

50代面接官も企業で然るべき立場で働いている以上、社会を構築している一人の人間である。それなのに「世の中は厳しいんだ!!」と言って、まるで自分には責任が無いような言い方をしている。

 

こんな人間を面接官にするなんて、上の人間のマネジメントの失敗だな…と思った。

こんな会社、絶対入りたくない。

100億もらっても、入りたくない。

 

B社の勘違い面接官の話

次にB社という会社の採用面接を受けることになった。自分は大学時代にとある機械を扱っていた経験があったために、B社からオファーがあったのだ。B社の業務内容は工学寄りであり、自分は工学系ではないとあらかじめ伝えたが「面接を受けてほしい」と伝えられ、面接を受ける運びになったのだ。

B社の面接官は1人であった。面接が始まったとたん、1枚のマークシートを差し出され「それに記入をしてほしい」と言われた。

そこには「習得しているスキルの番号を鉛筆で塗りつぶしなさい」と書いてあり、主に工学系のスキル項目が50個ほど羅列してあった。

2DCAD、3DCAD、電気工事、C言語などなど…

マークできるものが、ひとつもなかった。

大学時代に扱っていた機械の名前をその他の欄に書き込んで、マークシートの書き込みは終了した。

そこから面接官は企業紹介を始め、自分の待遇の話になった。

「君はB社が求める能力の基礎が無い。」

「たとえ採用になったとしても3年間の契約社員だ。ボーナスはない。」

 「採用したら3年間の下積みののち、正規社員にするかどうか決めるよ。」

 

B社はあきらかに即戦力を求めていた。自分には適していない。だから、あらかじめ「自分は工学系ではない」と伝えていたのになあ…。

B社での採用面接でそれらを把握した自分は、採用面接終了後、即座に選考辞退のメールを送信した。おそらく、採用面接が終了してから2時間も経っていなかったと思う。

 

次の日、B社の面接官から怒りの電話が来た。

「B社の何が気に入らなかったんだ!」「給料か、勤務地か、どっちだ!」

B社の面接官は自分が即座に選考を辞退したことに腹を立てていた。

 いや、あきらかに即戦力をB社は求めているのだから、それに応えられない自分はどう考えても不適だろう。それを見越して求職者から辞退するのは妥当であるはずだ。面接官は選考辞退の理由も「給料か勤務地」と予測を立てたようだが、どちらもハズレである。

この面接官は、求職者を不採用にするのは何も感じなくても、求職者から選考を辞退されることには怒りを感じるようである。

ダメだこりゃ(´・ω・`)

 

面接官に必要なのは器の大きさ

その後自分は、無事に就職することができた。その就職先の採用面接では「自分が馬鹿でした」とは言っていない。というか、卒業してから就職活動をしている理由すら聞かれなかった。

A社とB社の採用面接を経験した自分は、入社したばかりのころは警戒心が物凄く高く「どうせお前の代わりなんかいくらでもいるんだ!」とか「これだから最近の若いもんは使い物にならねえな!!」とか言われるのではないかと思い、荒んでいた。しかし、職場の人はとても良い人で、自分の話をよく聞いてくれる人ばかりであった。尊大な態度を取ることなんて一回も無い。失礼な態度を取ったのは自分の方であった。反省…。

 

その後、自分は採用関連の仕事のお手伝いをさせてもらえる機会を頂き、採用案内の作成やインターンシップの準備などを行った。企業と求職者のミスマッチは、お互いの情報が少ないために起こることであり、それらを減らすためにできるかぎりのことを今後もしていく予定である。

求職者、とりわけ学生は、忙しい学業の合間を縫って採用面接やインターンシップに来るのである。その姿を見ると、やはり学生は大変だなあと思わざるを得ない。その真剣な姿勢に、企業側は最大限の感謝と敬意を払わなければならないのだ。

 

加えて、採用する側の難しさも知った。面接官になったことはないのだが、限られた面接時間の中でどうやって求職者のことを知るのか、正しく評価するのか、思い込みを排除するのか、面接官は苦悩していた。

それらの様子を見ていくと「面接に挑む真摯な姿勢と人としての器の大きさ」が面接官に必須であることがわかった。

 

面接官は優秀でなければならない。上から目線の勘違い人間は面接官になる資格などないのだ。